周黄矢のブログ

噬嗑録

東洋思想を噛み砕き、自身の学問を深めるために記事を書きます。

論語

革命の是非

中国の歴史には度々「革命」ということがある。 孔子は革命についてどうお考えであったか。 論語には、革命について明確に述べた文章がない。少なくとも、孟子ほどにはっきりと、「徳がなく、民を苦しめるような者は伐ってよい」といったことは仰っていない…

日々どれくらい勉強すべきか

質問をいただいた。 質問箱に書ける文字数は2500文字が最大らしい。 超過してしまったので、ブログでお答えします。 質問の内容は以下の通り。 例えばきっかけをつかむために、まずは5分や10分から始めるというなら、大いに結構だと思います。いきなり何時間…

なぜ儒教では婚礼を重んじるか

近思録に関する質問をいただいた。 これは、なかなか難しい問題である。儒学が男女の礼、婚礼をどうとらえるか、ここが分からなければ混乱する。 実際、質問者は「これは不仁ではないか」と疑問を抱いている。 極く基本的なことから、詳しく解説してみたい。…

礼とはなにか

礼について質問を受けた。 質問は以下の通り。 質問者は「礼=作法・法律」と解釈している。これも間違いではないが、この見方に偏るならば現代的な解釈であって、礼の本質がわからなくなる。 本人が仰る通り、極く初学者向けにお話しする必要があるように思…

無窮を考える

今回も、質問への回答。 質問者は、現在近思録を学習中とのことで、以下の質問をいただいた。 近思録を元にした質問ではあるが、これは論語子罕篇に関する問答である。 論語の本文を見ながら考えていきたい。 伊川先生曰く 論語の本文 伊川先生の解釈 無窮の…

論語の建て前

先日、以下の質問に対して、①だけお答えして②③は後日、とした。 shu-koushi.hatenadiary.com この質問は、ロシアのウクライナ侵攻を受けたものであったという。 あまり触れたくない内容ではあるけれども、再度考えてみたところ、やはりお答えすべきであった…

報われない努力について

以下のような質問を受けた。 努力が報われぬ不幸について、である。 質問を受けてから。随分と日が経ってしまった。 ①はすぐにでもお答えできたが、②③に向かい合うのに時間を要したためである。 このような話題は、書きたくありません。 私の場合であれば、…

性善説と性悪説

儒学では、性善説(せいぜんせつ)と性悪説(せいあくせつ)がしばしば問題になる。 孟子や荀子を読み、どちらが本当であるか迷い、孔子はどうであろうかと論語をひもとく。 しかし論語の教えは、性善説とも性悪説とも断じかねる、どちらとも取れる言葉が多…

下学して上達す

論語を読む際に気を付けたいのは、孔子がどんなときに仰ったものであるか、あるいは教える相手が誰であるかなど、色々な要素で教え方が変わることである。 結局は同じことを教えていても、弟子の性格や学問の程度によって教え方が異なり、矛盾していると思わ…

仁と礼楽

仁と礼の関係について質問を受けた。 今回は、八佾(はちいつ)篇の章句を取り上げる。 八佾第三より 論語の読み方 一般的な解釈 仁と礼楽の関係 季孫と八佾の舞 下にして上を侵すは不仁 「如何せん」 私の解釈 質問への回答 八佾第三より 今回取り上げるの…

知らざるを知らずと為せ

論語には、一般にもよく知られる言葉が少なくない。 以下の為政篇の章句もその一つである。 子曰く、由(ゆう)、女(なんぢ)に之を知るを誨(おし)へんか。之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為せ。是れ知るなり。 この章句について質問も受け…

論語と孟子の関係について

ツイッターで論語に関する質問を募集したところ、さっそく以下の質問が寄せられた。 伊藤仁斎先生の論語古義では、 「孟子七篇の書物は論語の註釈である。だから孟子の意味が分かって初めて論語の意義を明らかに出来る。」 とあります。 この仁斎先生の意見…

孔子の理想とする「よろこび」とは

「よろこぶ」という漢字を色々調べていると、大変面白い気づきがあった。 この漢字を知ると、論語がもっとよく分かる。 君子のよろこびがどんなものであるか分かる。 色々気づいたことが消えないうちに書いている。 書きながら気づくこともあろう。 ごちゃご…

組織は人材をいかに遇するべきか~孔子が斉を去った理由~

何日か前、こんなニュース記事を見た。 www.itmedia.co.jp これに対し、「やりがい搾取」などとして、ツイッターで酷く叩かれていたようだ。 孔子なら、この問題をどうお考えになるだろうか。 孔子の逸話や言葉から、私なりにこの問題を考えてみたい。 景公…

「朋有りて遠方より来る」の戒め

以前「学びて時に之を習ふ、亦た説ばしからずや」について記事を書いた。 shu-koushi.hatenadiary.com ずいぶん間が開いたが、今回はこれに続いて 朋(とも)有りて遠方より来る、亦た楽しからずや。 について書く。 大まかな解釈 前回の内容 朋友とは 学ぶ…

好学考

先日ツイッターで、論語に関する質問が寄せられた。 「好学」に関する質問である。 私自身、新たに気づくこともあり、ありがたいことだった。 質問は、以下の通りである。 『論語』学而編の「子曰く、君子は食飽かんことを求る無く、居は安からんことを求る…

宰我昼寝考

孔門十哲の一人で、言語に優れているとして子貢と並んで挙げられた人物に宰我(さいが)(宰予(さいよ))がいる。 今回は、宰予の昼寝について考察する。 宰我について 孔門の問題児 心酔する宰我 子路との違い 宰我の悪いところ 宰我の剛情さ 孔子は怠惰…

鮮血淋漓の学問がしたい~古写本論語の重要性~

論語には、色々な本がある。 もちろん、元はお弟子たちが作った唯一のものがあったが、長い歴史の中で様々なものが生まれた。 中には意味が通じないものや、解釈の疑わしいものがあるから、儒学を学ぶうえで障害になりやすい。 ではどうするか。 一冊にこだ…

「士」に関する問答

ツイッターをやっているが、さほど意味を見出していない。 勉強などしていて、深く感じるところがあると書く。 ほとんど独り言のようなもので、誰かに意見を求めるでもなく、自分で感じたままに書いている。 理解を促そう、人にもわかってもらおうといった意…

時習と喜び

論語には有名な言葉がたくさんある。 通読したことがない人でも、しばしば論語の名句を知っている。 そのひとつが、論語の冒頭の章句、「学びて時に之を習う」である。 子曰く、 ①学びて時に之を習う、亦(ま)た説(よろこ)ばしからずや。 ②朋(とも)有り…

儒家と菜食主義

ツイッターで、菜食主義に関する発言を目にすることがある。 菜食主義については、数冊の本を読んだだけで、それほど多くの知識はない。 また、私は肉が大して好きなわけではない。 もちろん、食えば美味しいと思う、嫌いでない。 強いて肉を食べなくても困…

克己復礼にみる孔門の気骨

論語の有名な言葉に「克己復礼(こっきふくれい)」がある。 論語を読んだことがない人でも、この言葉は聞いたことがあるのではないか。 克己し、復礼し、仁に至る。 最近、このことをあれこれ考えていた。 自分なりに結論を得たので記事にする。 顔淵の問い…

仲弓の「南面の才」を作る三要素

孔門四科十哲の一人に、仲弓(ちゅうきゅう)という人物がいる。 姓は冉(ぜん)、名は雍(よう)、字は仲弓。 論語の第六篇、雍也(ようや)の雍とは冉雍仲弓を指す。 孔子は仲弓を、一国を治めるに足ると評した。 これは、仲弓が不佞(ふねい)であり、敬…

理想は「可もなく不可もなし」

「可もなく不可もない」 良くも悪くもない、無難、平凡といった意味で用いる。 なんとなく、見下した気分のある言葉だ。 可>可もなく不可もなし>不可 良い>普通>悪い 可もなく不可もなし、これは悪くないが、まだ足りないといった感じに用いられる。 少…

孔門の人々

論語について書くうちに、それぞれのお弟子を詳しくお話しする機会も出てきた。 弟子の人物やエピソードを知ることは、論語の理解に役立つ。 整理のために、特定のお弟子を取り上げた記事をここにまとめる。 四科十哲 徳行 顔回 仲弓 言語 子貢 政事 文学 十…

怒りを遷さず、過ちを犯さず。亜聖・顔回の真骨頂

孔子の一番弟子は顔回(がんかい)である。 聖人に近い人物であり、敬意をもって顔子(がんし)と称されることも多い。 孔子は聖人、聖人に連なる大賢人であるとして、顔回や孟子を亜聖(あせい)という。 なぜ顔回が亜聖といわれるか。 顔回の真骨頂はどこ…

弁才縦横、商才抜群、子貢は瑚璉なり

孔子のお弟子の中でも、異彩を放つ人物といえば子貢(しこう)である。 顔回、曾参、子路など色々な人物がいるが、子貢は特に変わった趣のある人物である。 今回は、子貢を取り上げる。 子貢の人物 弁舌の人 子貢の商才 金持ちな君子 子貢は瑚璉なり 君子は…

鳥の声を解した公冶長

論語公冶長第五の冒頭に、公冶長(こうやちょう)なるお弟子の話が出てくる。 公冶長という人の記録はほとんどなく、どのような人であったか分からない。 公冶長は鳥の声を理解したといわれる。 私も鳥は好きだから、公冶長について色々調べて見ると、大変面…

親の年齢を知る孝行

親孝行というものは、頭では大切に思っていても、いざ実践となると難しい。 そんなふうに思われがちである。 しかし、親孝行などというものは、ごく当たり前のことである。 当たり前に理解でき、当たり前に実践できるものだ。 要は、考え方ひとつである。 孝…

DaiGoの騒動に思うこと

時事を論ずることはあまり好きではないし、個人に対して色々意見を言いたくはない。 しかし、メンタリストDaiGoの騒動には、儒学的にも色々と思うところがあり、ひとつ文章を書いてみたいと思う。 「知」について思うこと 知識より見識、理想は胆識 見識がな…