周黄矢のブログ

噬嗑録

東洋思想を噛み砕き、自身の学問を深めるために記事を書きます。

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

仲弓の「南面の才」を作る三要素

孔門四科十哲の一人に、仲弓(ちゅうきゅう)という人物がいる。 姓は冉(ぜん)、名は雍(よう)、字は仲弓。 論語の第六篇、雍也(ようや)の雍とは冉雍仲弓を指す。 孔子は仲弓を、一国を治めるに足ると評した。 これは、仲弓が不佞(ふねい)であり、敬…

理想は「可もなく不可もなし」

「可もなく不可もない」 良くも悪くもない、無難、平凡といった意味で用いる。 なんとなく、見下した気分のある言葉だ。 可>可もなく不可もなし>不可 良い>普通>悪い 可もなく不可もなし、これは悪くないが、まだ足りないといった感じに用いられる。 少…

孔門の人々

論語について書くうちに、それぞれのお弟子を詳しくお話しする機会も出てきた。 弟子の人物やエピソードを知ることは、論語の理解に役立つ。 整理のために、特定のお弟子を取り上げた記事をここにまとめる。 四科十哲 徳行 顔回 仲弓 言語 子貢 政事 文学 十…

怒りを遷さず、過ちを犯さず。亜聖・顔回の真骨頂

孔子の一番弟子は顔回(がんかい)である。 聖人に近い人物であり、敬意をもって顔子(がんし)と称されることも多い。 孔子は聖人、聖人に連なる大賢人であるとして、顔回や孟子を亜聖(あせい)という。 なぜ顔回が亜聖といわれるか。 顔回の真骨頂はどこ…

弁才縦横、商才抜群、子貢は瑚璉なり

孔子のお弟子の中でも、異彩を放つ人物といえば子貢(しこう)である。 顔回、曾参、子路など色々な人物がいるが、子貢は特に変わった趣のある人物である。 今回は、子貢を取り上げる。 子貢の人物 弁舌の人 子貢の商才 金持ちな君子 子貢は瑚璉なり 君子は…

鳥の声を解した公冶長

論語公冶長第五の冒頭に、公冶長(こうやちょう)なるお弟子の話が出てくる。 公冶長という人の記録はほとんどなく、どのような人であったか分からない。 公冶長は鳥の声を理解したといわれる。 私も鳥は好きだから、公冶長について色々調べて見ると、大変面…

親の年齢を知る孝行

親孝行というものは、頭では大切に思っていても、いざ実践となると難しい。 そんなふうに思われがちである。 しかし、親孝行などというものは、ごく当たり前のことである。 当たり前に理解でき、当たり前に実践できるものだ。 要は、考え方ひとつである。 孝…

DaiGoの騒動に思うこと

時事を論ずることはあまり好きではないし、個人に対して色々意見を言いたくはない。 しかし、メンタリストDaiGoの騒動には、儒学的にも色々と思うところがあり、ひとつ文章を書いてみたいと思う。 「知」について思うこと 知識より見識、理想は胆識 見識がな…

悪衣悪食を恥ずる恥

悪衣は粗末な衣服。 悪食は粗末な食べ物。 そういうものを恥に思うのは、恥である。 ややこしい表現だが、恥に思うこと自体、恥である。 孔子曰く 士とは 偽物の多きこと 悪衣を恥ずる恥 子路の道心 一狐裘三十年 悪食を恥ずる恥 疏水の味を知るべし 公田先…

孔子の悲哀

論語の章句のうち、大変好きな言葉であるけれども、解釈に疑問が残る言葉がある。 里仁第四の、 朝に道を聞かば、夕に死すとも可なり である。 一般的な解釈 私の疑問 諸橋先生の優れた解釈 悲哀の言葉だ 根本先生の解釈 仁は高尚なものではない 孔子晩年の…

富貴・貧賤・君子・小人

富貴や貧賤に直面したとき、どのように処するか。 ここに、君子と小人の違いがある。 今回はそんなお話です。 君子と小人 君子とは 小人とは 小人は悪に傾く 君子と小人の違い 富貴に対する態度 富貴は誰でも欲しいもの 富貴そのものに善悪はない 南隠禅師の…

噬嗑録

私は毎日、日記をつけている。 日記帳には『噬嗑記』と名付けている。 噬嗑(ぜいこう)とは、易の火雷噬嗑(からいぜいこう)から採ったものである。 噬は噛むこと。 嗑は合うこと。 噬嗑とは噛んで合うことである。 口の中にあるものを噛み砕き、上の歯と…

暦のはなし

以前、弟に三国志のドラマであるスリーキングダムズを勧めた。三国志のことをあまり知らないと言っていたので、このドラマなら間違いないだろうと思って勧めたのだ。 案の定ハマり、短期間のうちに一気に観たようだ。 ドラマを勧めてみて、感じたことがある…

異端を攻めよ

先日、弟とお茶会をしていて、ひとつ気付いたことがある。 私は古い学問や伝統・文化が好きで、保守的な人間であると思っていた。 しかし、意外にそうではない一面があることを認識した。 求めるは同じ味か、違う味か 広く学ぶことの是非 異端の害 孔子曰く …

元亨利貞で学問す

昨日、弟と長時間にわたって話し込む中で、筆写についても色々と話し、自分自身、考えるところもあった。 弟には、私がなぜ筆写するかということについて、もう少し詳しく話したかったが、それは避けた。 易などと絡める必要があるが、それを弟に口頭で説明…

日本神話にみる努力の在り方

同じ意味で使われる言葉に対し、こだわりを持つことがある。 どちらを使っても、それを聞く人や読む人の意識に差が出ないような些細な違い。 自分だけがその違いを意識しているのだから、自己満足である。 しかし、そういうこだわりをひそかに持っておくこと…

一陰一陽の応用

一陰一陽は易の真髄 陰と陽の関係 一陰一陽の視点 天地の関係 男女の関係 一陰一陽の学 一陰一陽は易の真髄 易経の繋辞伝で、孔子は、 一陰一陽之謂道(一陰一陽、これを道と謂う) と仰った。 私は公田先生の『易経講話』で易を学んだが、公田先生はこの句を…

夷狄の君有るは・・・

古注と新注 古注「如かざるなり」 新注「如くならざるなり」 君臣が有れば礼義もあるか 下剋上の常態化に礼義なし 太子申生の例 陽虎の例 孔子の志から考える 孔子の嘆きから考える 総括 古注と新注 論語の章句には、解釈によって意味が大きく異なるものがあ…

腹中の書 壺中の天

ツイッターをやって良かったこと、良くなかったこと、どちらかといえば良くなかったことが多いように思う。 それだけに、良かったと思えることを大切にしたい。 勉強熱心を笑う風 私の学生時代 勉強熱心を笑う者なし 常識ある友人たち 人の己を知らざるを患…

俚諺を儒学で解すると(2)二度あることは三度あるか

ことわざにおける矛盾 繋辞伝に曰く 火天大有の卦 天祐とは 人の助け 天とは 道理に基づけば ことわざにおける矛盾 よく矛盾を指摘されることわざに、 ・二度あることは三度ある ・三度目の正直 がある。 二度あることは三度ある、これは一度目・二度目と連…